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家賃のインボイス制度対応について

インボイス制度においては、「適格請求書発行事業者」に登録されている者が発行した「適格請求書(インボイス)」を受領・保管することで消費税の計算上仕入税額として控除することができます。(インボイス制度全般についてはコチラをご覧ください。)

しかし、毎月一定の日に支払を行う家賃について、都度領収書を受け取っている方は現状ほとんどいないと思います。
また、大家さん側としても毎月領収書を出している方はほとんどいないと思います。

こうした場合のインボイス制度の対応はどのようにしたらよいのでしょうか?

共通した対応

インボイス制度の取扱いとして、「複数の書類でインボイス制度の要件を満たせばOK」とされています。
このことよって、

    1. 家賃支払い都度領収書のやり取りは不要
    2. 賃貸借契約書等の文書と支払いの行われた通帳等で要件を満たす

という対応になります。

よって、

  • 今後新たに賃貸借契約を結ぶ場合→契約書に必要な内容を記載
  • 現在賃貸借契約を結んでいる場合→契約書に必要な内容を記載又は内容の不足を補う

といった内容が必要となり、具体的には

  • 適格請求書発行事業者登録番号
  • 消費税額の内訳と適用税率

などの項目が契約書に記載されていない場合、内容を補う必要があります。

 

貸主(大家さん側)の対応

地代・家賃の消費税の取扱いは大きく分けると次のようになります。

課税されるもの 非課税のもの
地代 駐車場に係るもの(一定の場合を除く) 原則非課税(貸付期間が1か月未満の場合は課税)
家賃 住宅以外の建物に係る家賃 住宅の家賃(退去時の原状回復費は課税)

ここでご注意いただきたいことは、
大家さんが「課税される地代・家賃」を借主から受け取っている場合、インボイス制度への対応は慎重にならなければならない
という点です。

借主が消費税を払っている場合、大家さんがインボイス制度に登録しない場合は消費税を控除できなくなります。
これにより、

  1. 家賃の値下げ交渉
  2. 借主の解約

といった事態が生じる可能性があります。
一般的には消費税分の値引きを行うよりも簡易課税制度を使って消費税を納税する方が利益は多いとされていますので、
課税事業者となることも視野に入れる必要があります。(シミュレーションは弊社担当までご依頼ください。)

また、会社のオーナー等が自社に建物を貸し付けている場合も同様の扱いとなるため、注意が必要です。

 

借主の対応

借主の対応として、自社が消費税の免税事業者又は簡易課税制度により消費税を納付している事業者であれば特段の対応は必要となりません。
しかし、本則課税により消費税を申告・納付している場合、大家さんがインボイス制度に登録しているか否かで対応が変わってきます。

まず、大家さんがインボイス制度に登録している場合は、前述の方法で契約書等の内容を補記する必要があります。
これにより、以前と変わらない消費税の計算となります。

一方で大家さんがインボイス制度に登録していない場合、消費税の計算方法が変わります。
令和11年9月までは経過措置が設定されているため消費税を控除することが出来ますが、それ以降は消費税の控除ができなくなります。
これにより、消費税の納税額が増えることとなります。

 

インボイス制度の経過措置

インボイス制度に対応することには時間がかかることを鑑み、令和8年9月末までは80%、令和11年9月末までは50%の控除をそれぞれ認める経過措置が設けられています。この期間はインボイス制度に登録していない者への課税仕入についても一定割合を控除することが出来ますが、令和11年10月以降は一切控除できなくなるため、可能な限りすみやかな対応が求められます。

おわりに

インボイス制度への対応を巡り、免税事業者の皆様が一番影響を大きく受けると思います。
納税額のシミュレーションや対応の是非に関して弊社担当が相談をお受けしますので、是非お気軽にご連絡ください。

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